コラム

 公開日: 2016-07-13 

神護 FINAL ~戦いの果て~ 

今回の引退試合に向けゴールデンウィーク明けから減量を始めました。

65㎏契約というのは自分にとって“挑戦”でした。

秀翔は階級も経験も上の自分に挑戦する。

自分も大きなことに“挑戦”しなければつり合わないし、秀翔の覚悟に押されると思っていました。

試合というのは試合までに過ごした“時間の濃密さ”で決まると思っています。

常に自分と真剣勝負を繰り返すことで湧き上がってくる“孤独”“恐怖”“不安”にうち勝ってこそ日々の密度は濃くなり、研ぎ澄まされていく。

自分が秀翔に対して余裕な時間を過ごしていると、必ずそこには大きな落とし穴が生まれることは明白でした。

そういう意味でも自分に余裕を与えさせない為、厳しい契約体重を自分に課しました。

毎朝、日曜日以外はサウナスーツを着込んで走り込みました。

長い道のりを走りながら秀翔との対戦シュミレーションを何度もしました。

大会成功のイメージは全く浮かびません。

【自分が負けた方が良いのではないか・・・】

何度も弱い自分が現れました。

【秀翔を倒しても、自分には何も残らない・・・】

何のために戦い、何のために自分を追い込むのか。

自分自身との葛藤は続きました。

【これも神様が与えた試練、この戦いの結末を良いものにできるかどうかは、自分がどれだけこの試合と向き合えたか、どれだけ自分を追い込めたか、どれだけキックボクシングに懸命になれるかにかかっている】

そう信じて日々を過ごしました。

自分と秀翔は3月から一緒に練習をしていませんでした。

秀翔の練習内容などは一切知りませんでしたが、ジムでの勤務時間はちょくちょく秀翔の姿が目に入ってきました。

会員がいなければ真剣にジムの敷地の草むしりをし、窓を拭き、ゴミを拾い、仕事を自分で見つけてはコツコツと地道にこなしていました。

自分はその姿を見て確信しました。

【こいつは強い・・・】

人間力に比例して勝負の実力は総合的に上がっていく。

精神力も“運”でさえも強力になっていくものです。

自分に驕らず、相手を侮らない心・・・秀翔は間違いなく強い男になっていました。

自分は逆にロードワークの際などのゴミ拾いなどを一切辞めました。

【秀翔と同じことをやっていても、上を喰おうとする勢いのある相手には不利・・・俺は視線をすべて自分自身に向けよう】

秀翔の“徳”に、自分はこの試合に懸ける“集中力”で対抗しようと決めました。

純粋な想い、ひたむきな姿勢、挑戦する覚悟を持った人間に勝つことは容易ではない。

ほとんどの波乱、番狂わせ、下剋上はこのパターンで起こります。

もはや自分が負けることが最高のエンディングであるかのような流れでした。

この流れ、運命をかえるには、突き刺す様な集中力で貫こうと思いました。

ここから試合に対する意気込みが一気に上がっていきました。

そしてカツキさんが体を張って教えてくれた“漢は拳で殴り合った分だけ、絆が強くなる”という“愛ある戦い”に向け、秀翔への想いを潜在意識に刷り込ませていきました。

いよいよ計量の2日前には目に異常が現れるほど、身体は脱水症状と栄養不足で限界に来ていました。

計量12時間前には2㎏オーバー。

前日から絶食、ほぼ睡眠をとらずに半身浴、ロードワーク、ガムを噛み唾液を絞り出す作業を繰り返しました。

そして2ヵ月に及ぶ減量で64.8㎏まで落とし、ちょうど10㎏の減量に成功しました。

計量を終え、水分を口にすると直後に全身の毛孔から汗が噴き出すほどギリギリの状態でした。

まずは1つ、大きな目標を達成しました。

あともう1つ、“勝ち負けを越える愛ある戦い”をすること・・・

自分と秀翔のこの試合に対する想いがどれほどのものか、ついに問われる日が来ました。

試合直前、カツキさんが自分にタイオイルを塗っている時に左腕にある、大きな傷を見て言いました。

「すげぇ傷やな・・・」

それは手術を3回もするほどの怪我を負った時の傷痕でした。

自分は小さいころから怪我が絶えず、親からは「あんたはもう手も足も小学校1年までに折った。あとは首だけだから気をつけないさい」と言われていました。

なぜか、この言葉が頭から離れず・・・自分は思いました。

【もし、自分の12年間が真っ当なものでなかったならば、今日、その報いを受けて俺の首は折れるかもしれない】

そして・・・

【この試合がつまらないものになれば俺はそこまでの男だったということ】

すべての準備が整い終わったころ、自分の覚悟は死を恐れない位置に定まりました。

そして秀翔の待つリングへ向かいました。

数多くの花束、激励賞、お言葉をいただきながらも、自分は全ての集中力を秀翔との戦いに向けていました。

リング上で向かい合った秀翔はすでにうつむき、感情が露わになっていました。

自分はコーナーに分かれる際、秀翔の頭を胸に寄せ心で伝えました。

【頼むぞ】

再び向かい合った秀翔の眼は激変していました。

強い眼光、闘志あふれる構え、ビリビリ伝わる気迫・・・。

自分は遂に最後の戦いがはじまったことを悟り、一気に集中力をトップギアに入れました。

開始直後、自分のジャブからの踏み込みに合わせてきた秀翔の右クロスの切れ味に、自分は危険を察知しました。

下手にボディー、アッパーを打つのは危険、そして不用意な連打は相打ち覚悟で打ってくる目をしている秀翔には命取りだと序盤で感じました。

自分の現在の到達点である“左右自在の構え”を駆使して秀翔の距離感と立ち位置を狂わせ完封する為、全神経を集中しました。

しかし、秀翔の気迫は尋常ではなく、手応えのあるパンチ、蹴りが当たっても倒れません。

追撃が狙えるチャンスでも、目の死んでいない秀翔に追撃するのは危険だと本能が自分に言ってきました。

無駄なスタミナは一切使えない・・・一瞬の油断が命取りになる・・・そんな戦いでした。

最後に全てを出し尽くした秀翔が倒れた瞬間、自分が2年前にPRINCE REVOLUTION 5で全てを出し尽くし倒れた姿と被りました。

全身全霊を懸けたその姿は神々しく、そして秀翔の闘争本能の火もまた小さくなっていくのを感じました。

【秀翔・・・ついにお前もここまで来たんやな・・・】

秀翔の拳から伝わる無数の問いかけ、【これが今の自分です。強くなっていますか?】

自分は最後まで秀翔に答え続けました。

【これが神護や!忘れるな!】

この戦いが勝ち負けを越えるものであったことは、判定を聞くまでもなかった自分と秀翔、そして観客の皆さんの静寂が物語っていたと思います。

自分の想像をも大きく越えたこの試合は、自分と秀翔でなければ成し遂げることができなかった“世界一難しい、愛ある戦い”だったと思います。

最後に、秀翔の問いかけに答えて、この神護 FINALのコラムを終えたいと思います。

「“大分のPRINCE”・・・頼んだぞ」

≪終≫

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